借家権と定期借家権を説明します。

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家主の権利・借り主の権利

建物の賃貸借は、何かともめ事に発展することが多いようです。借家人保護のため手厚い規制をした結果、不動産の活性化や経済の流動化に弊害を及ぼしていると言われています。それでは現在の借家法の概要を説明します。

建物賃貸借の更新

期間の定めの
ある場合
a) 当事者が、期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新拒絶、もしくは条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなければ、前の契の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

※期間については、定めがないものとなる

b) 上記通知をした場合でも、建物賃貸借の期間が満了した後、借家人が使用を継続する場合において、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも更新したものとみなす。
期間の定めの
ない場合
a) 建物賃貸人が解約申し入れをした場合
申し入れの日から6ヶ月を経過することで終了

※正当事由が必要…解約申し入れの時のみならず、6ヶ月経過後も存在していなければならない(判例)

b) 借家人からの解約申し入れ
  申し入れから3ヶ月を経過することで終了(民法の原則)
※存続期間
  1) 最長 = 20年(民法)
  2) 最短 = 直接の規定なし
  期間1年未満 = 期間の定めがないものとみなす

建物賃貸借の対抗力

■賃貸借の登記
■建物明け渡し

借賃増減請求書

地代が不相当となったとき 契約の条件にかかわらず将来に向かって、地代の増減を請求できる。ただし、一定期間増減しないと言う特約があればそれによる。
当事者の協議が整わないとき 請求を受けたものは、相当と認める額を支払えばよい。ただし、後に裁判が確定したときは、差額に年1割の利息を付け支払わなければならない。

造作買取請求権


賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、借家人は、賃貸借が終了するときに、賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求できる。
※賃貸人から買い受けた造作についても同様

転借人の保護

建物転貸借 a) 原賃貸借が期間満了または解約申し入れにより終了
原賃借人は、転借人にその旨の通知をしなければ、契約終了を対抗できない。
b) 通知後6ヶ月の経過により、転貸借は終了
借地上の建物賃貸借 借地権の存続期間満了による終了により建物賃借人が土地を明け渡す。
建物賃借人が借地権の存続期間の満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物賃借人の請求により、建物賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲で、土地明け渡しに付き相当の期限を許与できる。

居住用建物の賃貸借の承継

居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合 賃借人と、事実上、夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者がいるときはその同居者は、建物賃借人の権利義務を承継する。
※相続人がいる場合でも、居住はできる。
相続人なしに死亡したことを知った後1ヶ月以内に賃借人に反対の意思を表示した場合 承継しない。

期限付き建物賃貸借

賃貸人の不在期間の建物賃貸借

a) 転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情があること。
b) 建物を一定期間自己の生活の本拠として使うことが困難であること。
c) 一定期間経過後、
  貸し主が建物を生活の本拠として使うことが明らかなこと。
d) 一定期間を確定して建物の賃貸借の期間とすること。
e) やむを得ない事情を記載した書面で、
  契約の更新がない旨を特約すること。

取り壊し予定の建物賃貸借 a) 法令又は契約により建物を取り壊すことが明らかなこと。
b) 建物を取り壊すべき事由を記載した書面により、
  建物を取り壊すこととなるときに賃貸借が終了することを特約すること。

適用除外

一時使用のために賃貸借したことが明らかな場合借家関係の規定はすべて適用されない。

定期借家権とは

旧借地借家法では、家主が賃借人に出ていってもらうには、正当な事由が求められたり、高額な立ち退き料が要求されたりした。そのため、円滑な建て替えや、賃貸物件を売却することもままならず、経済の停滞が以前より論議されていた。そのため契約期間が満了したら必ず賃貸契約が消滅する定期借家権が創設されることになった。


制度の内容

端的に言えば、従来の借家制度に加え、期限が来ると契約が終了する制度である。特徴として次に掲げるようなことがある。

  1. 住宅用・事業用の区別をもうけない。
  2. 契約期間は貸し主と借り主の間で自由に設定できる。
  3. 新規契約のみを対象として、既存契約には適用しない。  (但し新規契約でも当事者間の合意があれば、従来通りの定期借家権を設定しない契約もできる)
  4. 借り主保護の立場から200m2以下の居住用建物に関し、やむを得ない事情(転勤・療養・親族の介護等)がある場合、借り主は1ヶ月前の通知により途中解約権あり
  5. 借り主保護の立場から住宅確保の難しい世帯(生活困窮者)の入居しやすい公営住宅の拡充(住宅建設5カ年計画)
  6. 既存の契約を定期借家権に変更する場合、双方の合意を義務づける。
  7. 契約時に「定期借家」であることを公正証書などで文章で示す。
  8. 貸し主は契約期限の6ヶ月前に更新意思の有無、家賃値上げなどの契約条件の変更を借り主に伝えなければならない。
  9. 住宅の場合従来の契約を合意終了させ、新たに定期借家権での契約をすることを当面の間認めない。
  10. 貸し手に契約時に「期間満了時で賃貸借契約は更新せずに満了する」と書面で説明しなければならない。無い場合は普通借家権。
  11. 国や地方公共団体に対し、住宅の性能や品質などを表示する制度の普及の促進を義務付ける。

現在の借家制度のデメリット

以前より現在の借家制度は次のようなデメリットが言われてきた。

  1. 貸し手側から契約更新の拒絶や解約をする場合、貸借双方の事情を裁判所が考慮の上、可否を判断する。
  2. 借家人保護の色彩が強く高額の立ち退き料が必要な場合がある。
  3. 貸家人が貸し渋る。

定期借家権制度のメリット

オーナーのメリット ユーザーのメリット 投資家のメリット
  1. 貸し手側の収益予想がたてやすい。
  2. 貸し手側の改修計画策定がしやすくなる。
  3. 老朽化した建物の建替えが進む。
  4. 入居者付き賃貸住宅の売却がしやすくなる。
  5. 相続税納税用に残しておいた土地を利用できる。
  1. 家族向けファミリータイプの供給が増える。
  2. 高齢者への賃貸もしやすくなる。
  3. 短期の契約期間から解放。
  1. 賃貸住宅への投資に安心感が出てくる。
  2. 入居者付き賃貸住宅の売却がしやすくなる。

 

定期借家権はアパート賃貸経営にこんなに影響を及ぼす

立ち退き料の問題 現在は借家人を立ち退かせるには、立ち退き料を支払わなければでてもらえない場合が多い。定期借家権制度だと立ち退き料が不要である。
計画的修繕 現在は部屋が空く都度リフォームするという小規模修繕しかできない。借家人が一斉にでれば、風呂・キッチン等水回り等の修繕や駆体部分などの大規模修繕も可能になるし、低コストで行うことができる。
家賃改定の計画性 現在は長期居住者の賃料はなかなか上げにくいが、入居者が変わればその時点の相場での賃料改定が可能である。
取り壊し、建替えが
うまくいく
取り壊し、建替えをしようとすると、うまくいっても契約期間満了時(契約期間がばらついていると最後の入居者の契約期間満了時)。立ち退きを拒絶するものがいれば立ち退き料も必要になる。これが定期借家権だと円滑に行く。
高齢者の
アパート経営の拡大
高齢者の方が住んでいる良質な住宅が、入居者の退去が困難なため賃貸に回ってこなかった。定期借家権で明け渡しが確実であれば、高齢者の住宅を賃貸にし、高齢者の方はマンション等へ転居が可能である。
2世帯住宅の賃貸化 2世帯住宅で、親が亡くなったり、子供家族の転勤で1世帯があいた場合、入居者の退去が困難でこれも賃貸にでてこなかった。この2世帯住宅の賃貸化が進む。
空室対策 やむを得ない事情がある場合をのぞいて契約期間が拘束されている。退去時期が明確であるため、次の入居者を計画的に募集できる。
流動化によりユーザー
ニーズの重視
現在でも賃貸住宅は借り手市場化しつつある。今後定期借家権が浸透すれば、入居者の選別も厳しくなる。良質な賃貸住宅以外は期間満了時に全員退去で空室と言うこともあり得る。